借家の解体トラブルとその対処法

「借家に住んで数十年。あちこち傷んできているものの、このまま生涯暮らすつもりでいる我が家に、突然大家さんから『解体』の知らせが…!」

ある日突然立ち退きを言い渡されるなんて、自分の身に置き換えるとただ事ではありません。こんな一見恐ろしい話ですが、借家に住んでいる限り「絶対に無い」とは言い切れないのです。

大家側の主張する理由としては「老朽化が進んでいるから・災害対策のため」というケースが多いでしょう。しかし大多数のご家庭にとって、多額の解体費用をすぐに捻出するのは難しいことでしょうし、そもそも自分たちの住処として長年暮らしている家をいきなり壊すなんて当然納得いきませんよね。

このような場合、その家で暮らしている人=借主は一体どうすれば良いのでしょうか。

借主に「負担義務はなし」!

まず知っておいていただきたい法律上のポイントは、「借主に費用負担の義務はない(貸主側が全額負担する)」という点です。

もしも解体前に賃貸契約が失効しており、契約に則って退去する場合には借主による原状復帰が必要になります。ですが、貸主側の都合により退去・解体をすることになった場合、その解体費用を借主が支払う必要はありません。

※ただし、旧借地法(契約期間が満了しても、地主側に正当な理由がない限りは半永久的に借地権が更新され続けるというもの。平成4年7月31日以前に契約されたものは旧法に該当)に基づく契約であり、かつ「更地にして返却する」旨の記載がある場合には、借主側が費用の負担をしなければならないことがある点にご注意ください。できれば、余裕のある時に契約内容の確認をしておくことをおすすめします。

「大家の一方的な通告」だけでは解体できない?

大家(貸主)から「お住まいの建物を解体します」などと突然知らされ解体することになっても、費用負担の心配はまずないことをお伝えしました。

しかしそもそも、貸家の解体工事は地主の都合だけでいきなり実行することはできません。そんなことになれば借主の生活に絶大な影響が及ぶわけですから、考えてみれば当然ですね。貸主・借主双方が納得のいくまで、充分な話し合いを重ねる必要があります。

では、実際にこのような状況になった場合、借主は具体的にどうすれば良いのでしょうか。

正解は、まず先に「解体工事の必要性を主張する地主に対し、工事の正当事由について説明を求める」ことです。

借主は、「住んでいる物件が老朽化している」ということ自体は認識しています。ポイントは、その老朽化に対し地主が適切な対応を取ってきたかどうか。たとえば、物件が借主の生命や財産に甚大な被害を及ぼす可能性がある状態なら耐震診断を受けているべきですし、耐震基準を満たすための補強工事を行っている必要があります。

このような「老朽化に対しての明確な証明」が大家側から提出された上で、それでも家屋の解体工事が妥当だという判断がなされた場合には、借主は解体工事を前向きに検討しなければなりません。

退去・解体工事が決まったら

物件の解体工事について双方が合意した場合でも、借主が1日や2日のうちに即退去するというのは現実的に不可能です。借主保護のため、大家は借主に対し最低でも契約解除日の6ヶ月以上前に退去勧告を出す必要があります。

これは法(借地借家法)で義務付けられているものであり、借主は、6ヶ月以内に通知された勧告については拒否することができます。また、地主には契約解除の1ヶ月前にも再度通知する義務があり、このような法的な手続きが正式に行われない場合は、再度話し合いの場を求めることができます。

借主の権利は法的に保証されています。解体工事を承諾したからといって、その後の大家の応対が不適切なものであれば、退去を急ぐ必要は全くありません。

さらに、退去に際し借主は大なり小なり不利益を被っているはずです。転居にかかる費用を軽減するためにも、貸主側の要求と引き換えに、金銭的な補償を提案するというのも一つの手です。たとえば敷金の返還や引越し費用の負担、引越し先の物件の契約金の負担など、譲歩してもらえそうなものについては(良識の範囲内で)積極的に交渉してみるのが良いでしょう。

交渉がまとまらないとどうなるの?

解体工事についての話し合いが全てスムーズにまとまるわけではないでしょう。一旦は合意した内容を、後になって地主が覆すということは充分あり得ます。

もしも、「明らかに貸主(大家)に有利な条件」を貸主側が持ち出してきた場合には、交渉を一旦保留にして第三者に介入してもらうのが得策です。

最も頼りやすい第三者といえば、契約時に貸主との仲介を担当した不動産会社です。基本的には中立の立場ですので、主張の正当性を判断する役としてふさわしいでしょう。

万一、不動産会社を通しての交渉を以ってしても収拾がつかないという時は、最終手段として公的機関に相談してみましょう。場合によっては簡易裁判所などの窓口と繋いでくれます。そこまで行くと、貸主にしてみても解体費用に加え弁護士を雇うための出費もかかることになり、普通は避けたいと思うはずです。

もちろん借主側も話し合いの泥沼化は避けたいと考えるのは当然ですが、自分だけの得を考えるだけでなく、両者が歩み寄り納得のいく結論に辿り着くことが最も重要です。お互いに多少の譲歩も想定した上で、穏便に話し合いを行うことが一番の解決方法だと思います。

まとめ

今まで当たり前に住んでいた家が突然解体されるとなると、日々の暮らしに多大なる影響が生じてしまいます。言い渡された瞬間は頭が真っ白になると思いますが、いざという時に慌てないために、「貸主(大家)の言い分だけでは解体できない」「解体することになっても費用は貸主(大家)が負担する」という2点は覚えておいていただきたいと思います。

もしも話し合いの中でトラブルに発展してしまった場合には、第三者を設けて冷静かつ生産的な話し合いをすることが先決です。

解体サポートでは、解体工事のご依頼だけではなく、このようなトラブルについてのご不安やお悩みもサポートさせていただいております。場合によっては司法書士・弁護士等の専門家をご紹介することも可能です。

どんなに些細なことでも結構ですので、下記フリーダイヤルもしくはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください

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