解体工事の関係法令・届出まとめ ~リサイクル・環境編~
解体工事に関する決まりについて、法律をはじめとした関連法令や許認可・必要な届出の解説を2編に分けてお届けしています。今回は「廃棄物のリサイクルや環境汚染」と特に関わりの深い法令を紐解いていきます。
ほとんどは解体業者に対して課せられた命令・規則となりますが、もちろん解体工事の依頼主に関わってくる部分も少なからず存在しています。
解体工事というものは人生でそう何度も経験するものではありません。初めてのことに漠然とした不安を抱える方がほとんどだと思いますが、あらかじめ関連する知識を頭に入れておくことで、不安な気持ちを少しでも軽くしておきましょう。
※前編記事「解体工事の関係法令・届出まとめ ~解体業の営業・届出編~」はこちら
豆知識
「法令」とは、法律・政令・省令等の総称です。各法令の優劣関係は「法律(国会の議決で制定される命令)>政令/施行令(内閣が制定する命令)>府令・省令/施行規則(内閣総理大臣および各省大臣の発する命令)>条例(地方公共団体の法令)etc.」となります。法律が(憲法・条約に次いで)最上位にあたる法令で、下位の命令は全て法律に基づいて制定されるものです。記事の中でも一部法律や規則が混在していますので、上記の関係性についてご留意ください。
なお、「通達(行政内部の命令)」や「告示(国民への通知)※一部を除く」も法令に類似していますが、厳密にはそれらは法令に含まれません。
廃棄物・環境汚染に関連する法令
建築リサイクル法
【関連リンク:「解体用語辞典:建設リサイクル法」】
建築リサイクル法、もとい「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」は前編記事[リンク]内でもたびたび登場した法律ですが、ここでも関係してきます。
前編記事内「■解体工事“前”の届出」に関連する決まりの他に、解体工事の中で発生した廃棄物の適正な分別・処分や再資源化(資源として再利用できるものは最大限回収しリサイクルする)を実施することを事業者に義務付ける内容が定められています。
ここでリサイクルが義務付けられた「資源」とはコンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの4種類を指し、まとめて「特定建設資材」と呼ばれます
廃棄物処理法(マニフェストの発行)
【関連リンク:「解体用語辞典:マニフェスト」】
廃棄物処理法(ただしくは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」)とは、
“廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的”として定められたものです。(同法第1条)
簡単に言うと、事業者が排出した廃棄物が最終的に処分されるまでのルートを確実に記録・管理させ、不正な処分によって環境に悪影響を与えることを予防するための法律です。 これにより、解体業者は工事中に発生した廃棄物の処分を他の業者に委託する場合、その処分過程を「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」と呼ばれる書類で管理することが義務付けられています(この義務を怠ることは明確に違法となります)。
※排出事業者が自ら最終処分まで行う場合や「廃棄物が再生利用されることが確実」な場合など、マニフェストの発行が不要となるケースもありますが、そのような場合でも「記録として残しておく」ために発行する方が望ましいとされています。自社処分でもきちんとマニフェストを発行している事業者は、比較的優良業者である可能性が高いでしょう。
このマニフェストでは、中間業者~最終処分業者へと流れていく各過程でそれぞれの処理を担当する業者からの押印(受付日・事業者・担当者)を確認できるため、大元の排出業者が委託した通りに廃棄物が処理されている証拠となります。
また、マニフェストは7枚つづり(A、B1、B2、C1、C2、D、E票)になっており、依頼主は一番最後の「E票」を確認する権利があります。優良な業者であれば他の書類と一緒にE票も提出してくれることがほとんどですが、もし提出されなかった場合は「マニフェストE票のコピーを見せてください」と請求しても問題ありません。
万が一、提出されたマニフェストの中に押印漏れや不正な複製等があれば、残念ながらどこかの段階で不法投棄された可能性があります。マニフェストの記載内容に不安がある場合は、交付した業者に直接問い合わせるか、各自治体に相談・申告するというのも一つの手段です。
大気汚染防止法(アスベストの調査)
【関連リンク:「今知っておきたい!『アスベスト』のあれこれ」】
大気汚染防止法では、「特定建築材料(吹付け材・断熱材・保温材・耐火被覆材のうち、石綿を意図的に含有させたもの・または石綿が質量の0.1%を超えて含まれているもの)が使用されている建物の解体作業等を行う際、事前に届出を行うこと」、また「石綿(アスベスト)の飛散防止対策、および作業基準を遵守すること」を事業者に対し義務付けています。
これにより、2006年年9月1日以前に建てられた建物を解体する場合、事業者はアスベストを含む建材が使用されていないかを事前に調査すること(アスベスト調査)、またその結果を依頼主に説明した上で現場の見えやすい場所に調査結果を掲示する義務が課されることになりました。
アスベストというと鉄骨造やコンクリート造の大きな建物に使われているイメージがあるかもしれませんが、当時は一般的な木造の家屋にも屋根材等として用いられていた可能性が十分にあります。解体したい建物が該当年月日以前に建てられたものであれば、アスベストの調査を実施してもらえるかどうかを業者に確認しておきましょう。
というのも、アスベストの調査には特別な資格(建築物石綿含有建材調査者)が必要で、アスベスト含有建材を使用した建物の解体工事を積極的に受注しない業者の場合、断られる・もしくは高額な費用を請求される(資格を有した専門家に依頼するため)ケースがあるからです。
もちろん自社でアスベスト調査が可能であったり、また資格を持っていなくても専門家との繋がりが強固な解体業者の場合は、一連の流れもスムーズで費用も抑えられる傾向にあります。
誠実な解体業者であれば、そういったことも含めて丁寧に解説してくれることがほとんどです。また、着工前には存在が分からなかったアスベストが後から発見された場合(こういったケースも少なくありません)でも、依頼主への報告なしに勝手に進められることはなく、速やかに情報を共有した上で「どのように対策するか」「費用はどのくらいかかるか」といった事をきちんと説明してくれるはずです。
※2014年よりアスベスト対策がより強化され、依頼主もアスベストの管理について責任を負うことになりました。少しでも不安な場合は、依頼する解体業者や私たち解体サポートのような第三者へ積極的に相談するようにしてください。
まとめ
解体工事の関連法令や届出について、今回は「廃棄物のリサイクルや環境汚染」と特に関わりの深い内容をご紹介いたしました。
本記事の中で依頼主が心得ておくべきポイントとしては、解体工事を依頼する業者が「工事終了後にマニフェストE票(コピー)を提出してくれたか」という点と、「アスベスト調査に関して知識を有し、しっかりと実施してくれるか」という点、この2つが最も重要なものになります。
解体工事と向き合う必要に迫られた時にパッと思い出せるよう、ぜひ頭の片隅に入れておいてくださいね。
もし少しでも不安なことがあれば、「第三者に相談すること」をためらわずに行なってみてください。解体サポートでは、解体に関するちょっとした疑問にも真摯にお答えさせていただいております。
★お時間がありましたら、ぜひ前編記事(「解体工事の関係法令・届出まとめ ~解体業の営業・届出編~」)もご一読ください。