事業主、店舗オーナー必見!「フロン法」の内容と2020年4月からの改正内容について

皆さんは「フロン」という物質をご存知ですか?

あまり耳馴染みのない名前かもしれませんが、地球温暖化問題で「フロンガス」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。

まさにその「フロン」こそ、今回のテーマ「フロン法」によって規制されている物質です。

本記事では、フロンとは一体どんな物質でどれほどの害があり、また建物の解体工事とはどういった関わりがあるのか、という点に焦点を絞って解説していきます。

先読み!この記事の結論

  • フロン(フロンガス)とは、オゾン破壊力・温室効果の高い冷媒の一種
  • フロン法は、フロンが使われた業務用機器(エアコンや冷蔵庫等)を処分する際に関わる法律
  • 2020年4月、フロンの適正処分をより確実に進行・把握するための法改正・罰則強化が行われた

<目次>

  1. フロン法とは?
    そもそも「フロン」とは?
    フロン法の制定
  2. 解体工事に関連するフロン法の規定/2020年4月以降の改正ポイント
    「対象機器の所有者」に課された義務
    「解体工事の受注者」に課された義務
    「解体業者等」に課された義務
    「フロン類回収業者」に課された義務
    全ての役割にかかる罰則
  3. まとめ

フロン法とは?

まず初めに、フロン法、もとい「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」について、フロンの定義や法律が制定された流れについて解説していきます。

そもそも「フロン」とは?

フロン(フロンガス)とは、一般家庭の冷蔵庫やエアコン(カーエアコン含む)、コンビニ・スーパーなどで目にする冷凍・冷蔵ショーケースといった「ものを冷やす」用途の機器に使われている化合物(冷媒)の一部を指すものです。

人体に対する毒性が低く化学的に扱いやすいことから、上記以外にも洗濯乾燥機や断熱材、さらにはダストブロワー(ゴミ取りスプレー)まで本当に様々なものに用いられ、人類にとって大変身近な存在となっていきました。

ただしこのフロン類、とりわけ特定フロンが大気中に放出されると、長い時間をかけて成層圏のオゾンを破壊していくことが分かっています。またフロン類全般に共通する点として地球温暖化を進行させるパワーも、比較的槍玉に上がりやすいCO2(二酸化炭素)の比ではありません(最大でCO2の数千倍もの温室効果があります)。

私たちの生活を便利にしてくれる代わりに地球の環境破壊を早めてしまうという、非常に大きな代償が隠れていたのです。

ここまでの説明で、特定フロン/代替フロンに係らず「地球に優しくないことは間違いない」物質であるということはお分かりいただけたかと思います。

フロン法の制定

現在でこそ世界各国で排出を規制されているフロンですが、1984年に南極でオゾンホールが発見されるまでは、実は一部の研究者を除いてあまり問題視されていませんでした。

日本で初めてフロン排出に関する法律が制定されたのは、そこからさらに十数年後の2001のことで、当時は「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」という名称でした。その後、2013年に「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」に改正され、現在に至ります。

そして今回(2020年4月以降)、日本国内で温室効果の低い冷媒への転換を本格化させるため、法律の一部がさらに改正される運びとなりました。

※フロン排出に絡む法律は今回取り上げている「フロン法」だけではありません。
他にも「家電リサイクル法」や「自動車リサイクル法」等の中でフロン類の回収について定められており、家電リサイクル法では家庭用のエアコン・冷蔵庫等、自動車リサイクル法ではカーエアコン、そしてフロン法では業務用の空調機器や冷凍冷蔵ショーケース・自動販売機等…といった具合に、それぞれ規制対象が異なっています。

今回は「家電リサイクル法」や「自動車リサイクル法」については深堀りせず、「解体工事に関連するフロン法」にスポットを当てていきます。(※家電類はフロン法の規制対象外です。)

解体工事に関連するフロン法の規定/2020年4月以降の改正ポイント

※一般的な家屋の解体時に業務用の機器が出てくるケースは少ないため、特にオフィスや飲食店などの解体工事時に関係してくる内容、という前提でご覧ください。

フロン法では、フロンの排出・回収に関し、主に対象機器の所有者・解体工事の受注者・解体業者等・フロン類回収業者など役割に応じた義務や責任をそれぞれ定めています。

これらフロンに関わる各主体に課された義務の内容(主に解体工事に関係する部分)と一緒に、2020年4月からの改正点もご紹介していきます。

「対象機器の所有者(第一種特定製品の管理者等)」に課された義務

◎対象機器の所有者(第一種特定製品の管理者・整備者・廃棄等実施者)は「解体工事の施主(依頼主)」にあたります。フロン法の対象機器は業務用機器のみとなりますので、

“使用していた対象機器を破棄する店舗オーナー”などが対象となります。
 ※実情は事業に使用している機器であっても、機器の品質表示内に「家庭用」である旨が記されている場合、本法ではなく家電リサイクル法に従うことになります。

☑業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)の廃棄時、フロン類回収業者へ対象機器を引き渡す
 ・解体業者等にフロン類回収業者への引き渡しを委託する場合、「委託確認書」を交付する
 ・フロン類回収業者にフロン類を直接引き渡す場合、「回収依頼書」を交付する
 (→違反すれば50万円以下の罰金)
☑フロン類の回収・再生・破壊に必要な料金を支払う
☑解体工事の受注者が行う対象機器の有無の確認に協力する
☑解体工事から90日が経過してもフロン類回収業者から「引取証明書」の交付がなかった場合、および虚偽の記載があった場合は都道府県知事へ報告する
☑「委託確認書」または「回収依頼書」の写し、「引取証明書」を3年間保存する。

主にこれらの義務が定められています。

さらに、2020年4月以降は

☑対象機器の点検記録(簡易点検/定期点検)を、機器の廃棄後も3年間保存する
☑対象機器の廃棄時には「引取証明書(行程管理票E票)」の写しを必須とする
 (→フロン未回収のまま機器を廃棄すれば50万円以下の罰金)
☑解体業者等から交付される「事前確認書」を3年間保存する

という項目が追加されました。

「解体工事の受注者(特定解体工事元請業者)」に課された義務

☑ 対象機器(業務用冷凍空調機器=第一種特定製品)の有無を確認する
☑「事前確認書」を用い、解体工事前の調査結果を施主に書面で説明する

これらの義務が定められています。

「解体業者等(第一種フロン類引渡受託者)」に課された義務

◎設備業者、建物解体業者、産業廃棄物処理業者などをひっくるめて「解体業者等(第一種フロン類引渡受託者)」としています。

☑フロン類回収業者に「回収依頼書」を交付し、フロン製品を引き渡す
 (→違反すれば50万円以下の罰金)
☑対象機器の所有者から「委託確認書」を交付された場合、フロン類回収業者にそれを提出した上で、写しを3年間保存する
 (→違反すれば50万円以下の罰金)
☑フロン類回収業者から交付された「引取証明書」の写しを3年間保存する
 (→違反すれば50万円以下の罰金)

主にこれらの義務が定められています。

さらに、2020年4月以降は

☑「事前確認書」の写しを3年間保存する

という項目が追加されました。

「フロン類回収業者(第一種フロン類充塡回収業)」に課された義務

☑解体業者等に「引取証明書」を交付する
 (→違反すれば50万円以下の罰金)

などの義務が定められています。

以上がそれぞれの役割に応じて課された代表的な義務や責任です。

このほか、フロン製造業者やフロン類再生・破壊業者および排出事業者等に対しても、それぞれに義務や責任が制定されています。

※フロン法についてより深く知りたい方は、環境省の「外部リンク:フロン排出抑制法ポータルサイト(http://www.env.go.jp/earth/furon/)」から詳しい内容をご覧いただけます。

全ての役割にかかる罰則

フロン法では、フロン類の排出一層の強化と適切な回収・処理がなされたかどうかの確実な把握を目指すため、フロン類をみだりに放出(※)した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科すことになっています。この罰則に関しても2020年4月の法改正によって強化されました。
(※「フロン類をみだりに放出」…フロン類が適切に回収されていない状態で対象機器を投棄すること)

具体的には、違反が発覚次第、行政指導を経ず直ちに刑事罰が科せられることになります。これは回収や廃棄を担当する立場の事業者だけでなく全ての者が罰則対象となりますので、対象機器の所有者(店舗オーナーの立場)も等しく遵守しなければなりません。

まとめ

解体工事とも関わりの深いフロン法について、2020年4月からの改正内容と共に詳しくご紹介してまいりました。

普通に暮らしているだけではその内容に注目する機会など滅多にない法律なので、ちょっと耳にしただけでは「フロンガスを専門に取り扱う事業者にしか関係のない話では?」と思ってしまいますが、店舗の閉店・解体に伴う業務用エアコンの廃棄時など、全ての事業主・店舗オーナーの方にとって、案外身近な場面でもフロン法は関わっています。

世界中の多くの人が、冷蔵庫や冷房機器といった“文明の利器”の恩恵を受けている現代。日頃から便利に使っている機器類ですので、今回のフロン法の解説が最終過程について少しでも理解を深めるきっかけとなれば幸いです。

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