アパートの解体費用の相場は?取壊しの手順も解説

空き家問題は戸建て住宅だけでなく、アパートなどの共同住宅も深刻化しています。

現在、全国の空き家総数はおよそ846万戸ですが、そのうち475万戸と半数以上が共同住宅です。なかでも全戸空室となっている木造や鉄骨造のアパートでは管理が行き届いていない場合は戸建て住宅と同様に老朽化に伴う倒壊や放火の恐れがあり、また近隣への衛生面の問題も軽視することはできません。

アパートは戸建て住宅よりも規模が大きい場合が多く、解体費用も高くなるケースがほとんどです。地域よってはアパートの解体工事の助成金制度を設けている自治体もあるので確認してみましょう。

先読み!この記事の結論

  • 新しくアパートやマンションが建ち、古いアパートは空き家に
  • まだ入居者がいる場合は事前に立ち退きのお願いを
  • 三階建て以上は解体費用が割高に
  • 自治体によっては助成金制度を設けているので確認を

<目次>

  1. アパートが空き家となる原因
  2. アパートの解体工事の手順
  3. アパートの解体費用の相場
  4. 建物以外にかかる費用
  5. 助成金制度の利用

1.アパートが空き家となる原因

1960年代頃から若者が都市部へ出ていくようになり、それに伴いアパートがどんどん建築されました。それらが建てられてから50年以上が経過し老朽化する一方で、新たにアパートやマンションが建築され続けています。古いアパートはリフォームやリノベーションをするにしても高額な費用がかかるため、そのままにしている方も多いでしょう。

また、相続した古いアパートの経営・管理ができず、そのまま放置しているのも空き家のアパートが多く存在する理由と一つです。

2.アパートの解体工事の手順

工事前

ⅰ)入居者への立ち退きのお願い

解体を考えているアパートにまだ入居者がいる場合は、まず入居者へ事前に立ち退きのお願いをする必要があります。借地借家法26条によると期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借主に対し更新拒絶の通知をしなければなりません。

また、立ち退いてもらう代わりに立ち退き料を支払うことが通例となっています。この準備も必要になり、入居者がいる戸数によっては決して安い金額では済まない場合もあります。

ⅱ)現地調査

解体業者に現地を調査してもらい、正確な見積もり金額を出してもらいましょう。

構造や立地条件、建物の状態などによって金額が違います。

また、可能な限り立会って内部(処分品など)も見てもらいましょう。立会いすることで業者さんの対応なども見られると思います。

ⅲ)見積もり書を受け取る

現地調査に基づき、見積もり書を提出してもらいましょう。現地調査後おおよそ2、3日~1週間程度で提出されます(規模などによっては時間がかかる場合があります)。

見積もり内容は解体サポートでもチェックしております。

相見積もりを取られる場合は、工事内容が同じか確認しましょう。総額だけを見て安い業者にお願いすると見積もりに含まれていない工事があり、結局高くなったということになりかねません。

ⅳ)工事の依頼

見積もり内容を精査し納得した上で契約。事前に工事内容の最終確認をしましょう。

ⅴ)近隣挨拶

実際に解体工事が始まると、近隣の皆様には少なからずご迷惑をお掛けすることになります。規模によっては一般的な戸建て住宅より基礎が厚く、振動や騒音が大きくなり、工期自体も長くなる可能性もあります。近隣挨拶はもちろん業者さんもしますが、できればご自身でもしておきましょう。

ⅴ)引込配管、配線の撤去の手配

電気、ガス、水道など、それぞれの業者に連絡をし、撤去の依頼をお願いします。

電気…電力会社に電気の停止・電気メーター、引込線の撤去を依頼して下さい。

ガス…都市ガスの場合はガスメーターの閉栓撤去・ガス管の地境切断をガス会社に依頼して下さい。プロパンガスの場合はガスボンベの撤去依頼をして下さい。

有線・CATV…移設して引込線の撤去を依頼して下さい。

浄化槽・便槽…専門の清掃業者に汚物の清掃を依頼しましょう。

解体業者に相談してもOK。

水道の移設…特に工事中にホコリの飛散を防ぐために散水用に使う事が多いので、完全に撤去せず業者さんに相談してください。

ⅵ)役所への工事の届出

解体工事では延床面積が計80㎡以上の建築物を解体する場合には、建設リサイクル法の対象となるため、届出が必要となります。(関連リンク:「建設リサイクル法」)

⇒※解体工事をする際は事前に届出・申請が必要?

解体業者に代理で行っていただけますので工事を依頼する際にお願いしましょう。

工事中

ⅰ)足場養生の組み立て

解体工事は高所での作業が伴うため、まず足場養生の組立を行います。その際、防音シートや防炎シートをかけ、騒音やホコリを防ぎ、近隣の方のご迷惑を最小限にします。

ⅱ)建物内部の解体(内装解体)

建物から手作業で撤去できるものを撤去します。

例)たたみ、サッシ、断熱材、建具、瓦、内部造作、住宅設備機器、石膏ボード、不要品(タンス・衣類など)

ⅲ)建物本体の解体

重機で壁、屋根、梁、柱などが残った上屋を解体します。立地によって重機の大きさが変わります。小型の重機も入らないような場所は手作業で解体していきます。

ⅳ)基礎の解体

基礎を掘り起こし撤去していきます。ほこりが飛ばないように、水をまきながらの作業となります。

ⅴ)廃材の分別・収集・搬出

上記2~4は廃材を木材、鉄、プラスチック、コンクリートガラなど分別しながら行います。細かなものは手作業で分別をしながらの作業となります。

ⅵ)地中の確認

家屋解体終了後、廃材が地中に残ったりしていないか30~50㎝程掘り起こします。稀に以前のものと思われる基礎や瓦などが埋められている場合もあります。その場合はその量によって別途費用がかかるため、業者から依頼者にご報告した上で撤去することになります。

ⅶ)整地

解体後の地面を平らに整地します。しかし、一言で整地といっても業者によって大きな差がでます。基礎を掘り起こすことで少し土地が低くなることもあります。

※関連リンク:解体後の「整地」について 

解体後、駐車場にする場合は砕石を敷いたり、コンクリートやアスファルトによって舗装を施すことも可能です。

工事後

ⅰ)建物滅失登記

整地が完了したら滅失登記をする必要があります。解体業者から取壊し証明書などを用意し管轄の法務局に申請しましょう。

※関連リンク:建物滅失登記 

3.アパートの解体費用の相場

アパートも戸建て住宅と同様に、規模や構造、立地条件などによって取壊しにかかる費用が変わります。

以下は重機やダンプが問題なく使用できる場所での構造別二階建てアパートの解体費用の相場です。(※延べ床面積1坪あたりの単価。養生費、廃材の運搬処分費含む)

・木造 30,000円~40,000円/坪

・鉄骨(S)造 40,000円~60,000円/坪

・鉄筋コンクリート(RC)造 50,000円~80,000円/坪

地域によって処分費などが違いますので、工事総額も違ってきます。特に関東や関西の都市部は高い傾向にあります。

また三階建て以上になるとアームの長い重機を使用することがありますが、都市部だと狭小地や住宅密集地で使用できない場合も多く、三階部分や二階部分は手壊しでの解体になり費用も割高になります。

反対に地方では木造のアパートだと坪単価30,000円未満でできる場合もあります。

※関連リンク:解体事例

4.建物以外にかかる費用

上述した費用は建物自体の解体費用です。敷地内にコンクリート敷きの駐車場や駐輪場、ブロック塀などがあればその取壊しにも費用がかかります。

以下はアパートの解体で建物以外にかかる主な費用です。

・土間コンクリート

厚さにもよりますが一般的には平米あたり2,000円~4,000円前後が相場です。

・ブロック塀

通行人や隣家に危険が及ぶ可能性があり近年問題になっていますが、平米あたり2,000円~3,000円前後が相場です。助成金制度を設けている自治体もあります。

・交通誘導員

敷地内にダンプを停車しておくスペースがない場合や重機の搬入出時には交通誘導員が必要な場合があります。地域によって費用は違いますが1人につき1日13,000円~18,000円前後かかります。

5.助成金制度の利用

自治体によっては老朽化したアパートなどの解体の際に助成金が出る場合があります。

※関連リンク:解体助成金

例)東京都足立区

事業名 : 老朽家屋等解体工事助成

築年 : S56.5.31以前の建築物

事前診断 : 必要

補助内容 : 戸建住宅・共同住宅の場合1/2(上限50万円)

金額や条件、募集時期などは自治体によって違うので役所にお問い合わせしていただくのが確実です。

まとめ

入居者がまだいる場合はまずは立ち退きのお願いをする必要があります。立ち退きがスムーズにいかず、解体工事が計画通りに進まないということにならないようにしましょう。

また、アパートの取壊しは戸建て住宅よりも規模が大きい場合が多いので、振動や騒音が大きくなる可能性があります。また工期も長くなるのでその分近隣へ迷惑をかけることになります。業者さんだけでなく、可能であれば工事前にご自身でもご挨拶をすることがトラブルを防ぐ方法の一つです。

解体費用も戸建て住宅と比べて高くなる場合が多いので、アパートの所在地の自治体で助成金がないかホームページや直接お電話などで確認してみましょう。

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