《解体小説》空き家編・第七章
第七章 「知り合いの紹介で本当に良かった?」
翌週の日曜日、彩子と湘南までドライブに行った。
潮干狩りシーズンという事もあり道は混んでいたけど、やっぱり彩子と一緒にいると居心地がいい。
目的のレストランの着くまでに事の顛末を彩子に話したところ、
「やっぱり。だから言ったじゃない! そもそも契約書は交わしたの?」
「交わしてないよ。そんなカタい事しなくても知り合いだから大丈夫と思ったんだよ。
地元の付き合いだからしょうがなかっ……」
「地元の付き合いだからこそ、言いたいことも言えなかったんじゃないの?」
「……。」
その通り、何も言えないよ。
女性は現実的と思っていたが、さすがだな。
でも、いつもの彩子のテンションよりも、柔らかい話し方。なんだかスゴイ違和感。
「育った地元を大切にする気持ちや、そういうお人よしな所は嫌いじゃないけど、
これから一緒になると思うと少し心配になるわよ……。」
いつのまにか(というか必然か)こんな話に。
まぁ、いつかは結婚するものだとおぼろげには考えていたから、きっかけを作ってくれたじいちゃんに感謝しなくちゃ。
しばらくしてレストランの席に着くと、大きな窓の外には海&夕日という俺らしくないロマンチックな絶景が広がっていた。
そして沈みゆく夕日に横顔を染めた彩子の手には、何だか細長い箱が握られていた。
「これ、健一のお母さんが使っていたものみたいなんだけど、
お姉さんからこの間渡されたの。
『健一の奥さんになる人に渡してくれ』って
お祖父さんが大切に保管してくれていた物なんだって。」
母ちゃんの遺影に写っているネックレス!
姉貴はそれを探しに一日だけ手伝いにきたんだな。粋なことしれくれるじゃねぇか。
でもこれってなんだか逆な気がする。
俺が彩子に渡す方がかっこよかったんじゃない?
……まあいっか。
実家の解体を終え、ひと段落ついたと思ったら、また大切なものが背中に乗った気がした。
男ってやつはホント大変だ。
解体サポートからの解説
契約書の重要性
契約書とは契約を交わす双方(施主と業者)を守るための物です。
解体工事を依頼する場合は契約書もしくは、注文書・注文請書などを書面にて交わして下さい。
悪質な解体業者はわざと契約書を交わさずに工事を請け負い、工事が終わってから様々な理由をつけて高額な請求をするのも常套手段です。「地中障害物」が良くある例ですが、他にも、「重機が入らなかったので人力で壊した」「予定よりも工期が延びたから」などと言ってくる場合もあります。
知り合い業者のデメリット
解体工事とは経験する事がほとんどない工事ですので、経験をした知り合いや親戚などから紹介してもらうという方は多いようです。
たしかに、知り合いや解体工事経験者から紹介してもらうのは、安心できるポイントの一つでしょうが、実はデメリットが多々あるのでこちらでご紹介します。
【知り合いに頼むデメリット】
●見積もり金額が高くなる傾向
工事の依頼を頂く確率が高いとみると、見積もり金額がある程度高めに出てしまう事があります。また、「言い値」が通ってしまうこともしばしばあるようです。
●比較しづらい
紹介してもらったにもかかわらず、「他に見積もりを頼むのは忍びない…。」と見積もりを比較しづらくなります。また、見積もり金額が妥当かどうかも分からず、なんとなくお願いするというケースも多いようです。
●断りづらい
せっかく紹介してもらったにもかかわらず、お断りするのはその解体業者にも紹介をしてくれた方にも申し訳ない気持ちになってしまうため、断りづらくなってしまいます。
●言いたい事も言えないことが…。
色々な兼ね合いで「こうして欲しい」「ご近所からお小言が…。」などの言いたい事が言い難い場合も多いようです。
●発注~施工(契約)という観念が薄れる
知り合いや親戚の紹介の場合、「別にいいじゃない」「カタい事言わずに」と契約(発注者-施工業者)という観念が薄れるケースが多々あり、事故や不測のトラブルがあった場合に困る事が出てきます。