翌週の日曜日、彩子と湘南までドライブに行った。
潮干狩りシーズンという事もあり道は混んでいたけど、やっぱり彩子と一緒にいると居心地がいい。
目的のレストランの着くまでに事の顛末を彩子に話したところ、
「やっぱり。だから言ったじゃない! そもそも契約書は交わしたの?」
「交わしてないよ。そんなカタい事しなくても知り合いだから大丈夫と思ったんだよ。 地元の付き合いだからしょうがなかっ……」
「地元の付き合いだからこそ、言いたいことも言えなかったんじゃないの?」
「……。」
その通り、何も言えないよ。
女性は現実的と思っていたが、さすがだな。
でも、いつもの彩子のテンションよりも、柔らかい話し方。なんだかスゴイ違和感。
「育った地元を大切にする気持ちや、そういうお人よしな所は嫌いじゃないけど、 これから一緒になると思うと少し心配になるわよ……。」
いつのまにか(というか必然か)こんな話に。
まぁ、いつかは結婚するものだとおぼろげには考えていたから、きっかけを作ってくれたじいちゃんに感謝しなくちゃ。
しばらくしてレストランの席に着くと、大きな窓の外には海&夕日という俺らしくないロマンチックな絶景が広がっていた。
そして沈みゆく夕日に横顔を染めた彩子の手には、何だか細長い箱が握られていた。
「これ、健一のお母さんが使っていたものみたいなんだけど、
お姉さんからこの間渡されたの。
『健一の奥さんになる人に渡してくれ』って
お祖父さんが大切に保管してくれていた物なんだって。」
母ちゃんの遺影に写っているネックレス!
姉貴はそれを探しに一日だけ手伝いにきたんだな。粋なことしれくれるじゃねぇか。
でもこれってなんだか逆な気がする。
俺が彩子に渡す方がかっこよかったんじゃない?
……まあいっか。
実家の解体を終え、ひと段落ついたと思ったら、また大切なものが背中に乗った気がした。
男ってやつはホント大変だ。