2週間後、いよいよ実際に解体工事が始まると、ハツヨ婆さんから毎日のように電話が。
「ホコリがすごくて洗濯物もまともに干せない」
「うるさくてテレビの音が聞こえない」
「刺青をしている連中が上半身裸で作業している
「外国人の作業員が立ち小便をしていた」
「家の前の道路が泥のついた足跡だらけ」
などなど…。クレームのオンパレード。
初めのうちは竜二さんにその都度伝えていたけど、
「安くやってやっているんだから目をつぶってくれ。 俺らは解体のプロなんだから、素人が口出ししないでくれ!」の一点張り。
ハツヨ婆さんにはもう少し我慢をしてもらったとして、後でお詫びを入れに行かなきゃな。
とにかく工事が無事に終わりさえすればいいだろう。
――ところが、工事が最終段階に入ったころ、竜二さんから電話が。
「地面の下に昔の廃材が埋まっていたぞ。あと、昔の基礎もそのまま出てきたから、追加料金がかかる。」
「え~っ。そうなんですか。いくら位かかるんですか?」
「もう撤去しちまったが、30万円はプラスになるからな。」
30万円!!
でも『撤去しちゃった』って、それじゃあ本当に出てきたのかどうか分からないじゃないか。
安くしてもらった分は結局、追加料金で調整されたってことか……。
「……ああ。そうですか。分かりました。」
半ば投げやりな返事をして電話を切った。
結局180万円かかって、トラブル続きの現場は解体されて更地となった。
何とか解体工事は終わったけど、慣れないことばかりで本当に苦労した。(何度も経験するものではないので慣れることはないだろうけど。)