数日後、彩子からのメール。
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インターネットで色々調べてみたけど、25坪で194万円は
かなり高い部類に入るらしいし、
100万円以下で出来るような実例がたくさんあったよ。
あと、『来月になったら値段が上がる』っていうのも、
解体業者が契約を迫る際の常套手段みたい。
『諸経費30万円』も不明確だし。
いくら地元の紹介だとしても、もう少し考えた方がいいよ。
P.S. お姉さんは「他にも見積もりを取ってみたら?」
と他人事っぽい感じだったよ(笑)
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ん~。そうなんだ。随分と差があるなぁ。
竜二さんに直接話すのはちょっと気が引けるから、サブさんに相談してみよう。
「――そうか。解体の事はよく分からないが、もう少し安くせい、とでも伝えておくよ。 俺も兵吉じいさんには世話になったからな。」
その後、竜二さんからは『解体工事一式 150万円』というこれまた超簡単な見積もりが送られてきた。
50万円近く安くなったけど、だったら初めからその金額にしてくれれば良かったのに。
それでも彩子が言っていた『100万円位』とはだいぶかけ離れているけど、ここまで来たらもう断れないし、結局それでお願いすることにした。
竜二さんからは『家の中に残っている家財品の処分は別料金で、全部処分するとしたら50万円位かかる』と言われていたこともあり、何とか自力で家の中は片付けることにした。
まだじいちゃんが残していったものもあるし。
課長に頼み込み、何とか2日間の有給休暇をもらい、土日とくっつけて4日間を片付けに充てたが、姉貴もさすがに不憫と思ったのか、土曜日の一日だけ手伝いに来てくれた。
残しておいたほうが良さそうな物と捨てるものの仕分けだけでもやってみるとそれは大変な作業。
一つ一つ考えていたら進みっこないので、ある程度大胆に処分をしたつもりだったが、姉貴からは『それ、とっておいてどうすんの?』と一蹴されたものがあった。
それもそのはず、俺が感慨深げに持っているのはただの灰皿。
姉貴は覚えていないようだが、そのガラスの灰皿はじいちゃんと親父が共に使っていたもので、二人がその灰皿を囲んで会話をしている様子を唯一覚えているものだったので、俺はタバコを吸わないけど、思い出としてとっておく事にした。
さらに、じいちゃんが使っていた古い財布(現金無し)の中からは、セピア色に色あせた俺たちが小さい頃の写真が数枚出てきた。
その裏にはこんな一言が。
「何があっても一人前にする」
だって。……泣かせるじゃねぇか。
地元の幼馴染み3人に手伝ってもらったおかげもあり、4日間かけて家の中も何とか綺麗に片付き、その旨を竜二さんに連絡をした。